eスポーツにおける暴言とは
近年、eスポーツ(e-Sports)という言葉を耳にすることが多くなってきた。
eスポーツというかっこいい名前が付いているが、要はゲームである。eスポーツの大会とは、すなわちゲーム大会のことだ。
特に人気のタイトルでは世界大会も存在し、最近は賞金総額が1億円を超える大会も珍しくなくなってきた。
そのような発展を遂げているeスポーツの世界が抱える問題の一つに、「暴言」がある。
実はeスポーツでは、ゲーム中の暴言やゲーム実況者に対する暴言、ゲーム大会配信中の暴言が日々当たり前のように繰り広げられている。
そして、この暴言は主にチャット機能を利用して行われる。
オンラインゲームでは必ずといっていいほどチャット機能が付いており、それを利用した暴言が横行しているのだ。
暴言の内容は、非常に幼稚な表現で相手を貶す・煽ることから始まり、ミスプレイに対する過度な表現での批判や誹謗中傷、さらには差別的な表現を含むものまで存在する。(具体的な表現は書きたくもないのでここでは書かない)
また、チャットを使わずとも相手を煽ることを目的としたプレイで相手を不快にさせるプレイヤーも多く存在する。
僕もオンラインゲームが好きなのだが、この暴言問題にはずっと悩まされ続けてきた。
チャット機能はできる限りOFFにし、暴言が目につかないようにしてプレイしようとするが、仕様上OFFにできない全体チャットなどの暴言はどうしても目に付くし、暴言ではない煽りプレイなどは避けようがなく、本来楽しいはずのゲームで不快な気分になることも多い。
そのため今回は、僕が感じているeスポーツの世界から暴言がなくならない理由を書いていこうと思う。また、あくまで僕がやってきたゲームの話であるし、ゲーム歴10年程度の個人の意見なので、その程度の認識で見てもらえるとありがたい。
「eスポーツ」から暴言が無くならない理由
まず、ゲームとは本来とても楽しいもので、正しくプレイすることができれば子供から大人まで楽しめるコンテンツである。
しかし残念なことに一部のオンラインゲームでは他プレイヤーからの暴言などによりそういった楽しいプレイができない状況になってしまっている。
なぜ、このような状況になっているのか。
この問題は、大きく2つに分けられる。
- 暴言を吐く人間側の問題
- ゲームのシステム側の問題
まず、暴言を吐いてしまう人間側に問題があるのは当たり前であるが、一方で暴言を吐くことができてしまうゲームのシステムにも原因がある。
それぞれの問題とはどういうものなのか掘り下げて考えていきたい。
暴言を吐く人間側の問題
暴言を吐いた方が得をする
みんなはゲーム中に暴言を吐かれるとどういう心境になるだろう。
おそらく、相手に対しての怒りや悲しみといった感情が出てくると思う。そして、精神的にダメージを受け少なくともプレイの精度に影響が出るだろう。暴言を吐かれても普段と全く変わりないプレイを平然とできる人は少ないはずだ。
一方、暴言を吐いた側はどうだろう。
考えたくもないが、相手を傷つけるというやってはならないことと引き換えに、自分の怒りを誰かにぶつけることができた!言いたいことを言えた!というある種のすっきりとした感覚を得ることができるかもしれない。また、精神的におかしな人の場合、相手を傷つけたことにより謎の満足感を得ることもあるかもしれない。
つまり悲しいことに、暴言を吐いた方はプラスの影響を得ることができ、相手にはマイナスの影響を与えることができてしまう。
結果、暴言を吐く人にとっては、暴言を吐いた方が得をするという何とも残念な状況が出来上がってしまっているのである。
攻撃は最大の防御という考え方
生まれながらにしての暴言厨(暴言を吐く人)でない限り、初めてオンラインゲームをやっていきなり他人に攻撃的なことをする人は居ないだろう。
恐らくほとんどの人(暴言厨も含む)は、誰かから心無い暴言を浴びせられ精神的なダメージを負った経験を持っていると思う。
ここで、普通の大人であればそのゲームをやめるか、我慢して続けるかの2択になると思う。
しかし、ここでもう一つの道を見つける人がいる。
それは、暴言を吐かれる前にこちらから暴言を吐いてやろうという考え方になる人だ。
つまり、自分が攻撃される前に相手を攻撃するのだ。
相手を先に攻撃することで自分の身を守る。
暴言厨の中には、そんな悲しい性が原点になっている人も多いと思う。
暴言厨は暴言を肯定する
当たり前だが、暴言厨は暴言を肯定する。
人間は自分のやっていることを否定したりはしない。
しかし、ここで面白い事実がある。
それは、自分が間違っているとわかっている人ほど、必死になって自分を肯定する。ということだ。
この漫画の一場面はそのことを上手く表現している。
暴言は良くない、と思っている正常な人はわざわざそのことを大声で主張したりしないのである。それは、自分が正しい(というより正常な)ことを言っていると確信しているからだ。正常なことを言っているのだから、そのことを批判されても自分の意見が正常であることは揺るがない。
そのため、わざわざ時間と労力を使って相手の意見を否定したりしない。
というか、正常な意見に対して無理やり食ってかかってくるような頭のおかしな人間の相手をしたいと思わない。
しかし、暴言を肯定する人は自分が間違っていると本当はわかっている訳である。そのため、暴言は良くないという意見にわざわざ時間と労力を使って大声で批判する。なぜなら、自分で自分を肯定しないと、間違ったことを言っている自分を他に誰も肯定してくれないからだ。
あまり刺激的な表現は使いたくないが、極端な言い方をすると、
間違っている奴ほどよく吠える。
のである。
また、暴言を否定するのは暴言を吐かない人である。そのためその批判は相手へ配慮した優しい表現となり、相手を諭すようなものになる。
そのため、自分を必死で肯定しようとする暴言厨にはそのような意見は効果が薄くなってしまう。
暴言耐性がない!慣れろ!という意見
信じられないことに、暴言を肯定する意見の中には、
オンラインゲームには暴言があるのが当たり前!
精神的ダメージを受けるやつは耐性がない!
慣れろ!
の様な論理が破綻している意見をよく見かける。もちろんこれを言っている奴は暴言厨なのであろうが、これは意味不明にもほどがある。
なぜ、加害者側に合わせなければならないのか。
暴言を吐くやつがいなければそもそも初めから問題は起こっていない話である。
これは、万引き犯がお店側に対して「俺たちが万引きするのは当たり前!慣れろ!」と言っているのと同じである。もはや意味不明すぎて爆笑である。
さらに言うと、これらの意見を言う人はブラック企業の老害と同じ考え方をしてしまっていることに気付いた方がいい。
例えば、会社で若手が作業効率を上げるためにプログラムによる自動化をいくら提案しても、
俺が若いころはこれが当たり前だった!
楽しようとするな!苦労しろ!
と言う老害がいるが、本質的にはこれと同じ考え方をしているのである。
つまり、自分も暴言を我慢してきたんだからお前も我慢しろ!という、自分と同じ苦労を経験させないと気が済まないまさに老害の考え方である。
歳は若いはずなのに考え方は老害。
自分がとても残念な人間になってしまっていることに、早く気付いた方がいい。
システム側の問題
チャット機能
そもそもの話であるが、暴言が吐けるようなチャット機能が存在していることが問題だ、と言うこともできる。しかし、チャット機能はプレイヤー同士のコミュニケーションを円滑にすることや仲間を作ることなどの目的もあるため、一概に機能自体が悪ということはできない。
チャット機能において、コミュニケーションの向上という満足度と暴言による不快感は、まさに表裏一体なのである。
そのため、チャット機能を無くすのか無くさないのかの2択ではなく、ある程度制限して暴言は抑制しつつも、完全に無くすことはせずにコミュニケーションツールとしての役割は果たせるようなバランスの取れた状態に持って行くのが望ましいといえるだろう。
例えば、お互いが承認した上での個別のチャットルームのような機能は残し、全プレイヤーが強制的に見ることができてしまうような全体チャット機能は無くす。などが良いだろうか。
要は、各プレイヤーの個別設定によってチャット(さらには他プレイヤーによる何らかのコメント)が全く目に入らない状態を作れることが重要である。
しかし、運営側がどのような暴言があるか把握していなかったり、開発元と運営が別会社で機能に関する仕様変更の権限が無かったりするので、このような対策も遅れているのが実際のところだろう。
個人的には、自分が必至で作ったゲームのチャット機能を利用して暴言が吐かれていたら速攻で対策すると思うが、なぜこのようなことになっているにもかかわらず、その原因となっている機能に変更を加えないのかは本当に疑問である。
特に、暴言ばかりになっているチャットを放置している運営にはその理由を聞いてみたいものである。
特にペナルティが無い問題
例えば、野球やサッカー、バスケットボールの試合では、選手がミスしたからといって相手から煽られたり、味方から暴言を吐かれたりはしない。
暴言を吐こうと思えば吐ける環境であるのになぜだろうか。
それは、スポーツの試合には審判がいて、不適切な行為にはペナルティが与えられるからである。また、プロの試合でもそのような行為に対してはペナルティが課せられ、それらの行為は良くないことという認識がある。
しかし、野球やサッカー、バスケットボールなどでも、審判がおらず子供たちだけで遊びでやっている場合は話が違ってくる。誰にも怒られないため、ミスした相手を馬鹿にしたり、煽るようなプレイをすることもあるだろう。
eスポーツでは、普段のプレイ環境(公式大会以外)が全てこのような状況なのである。当然のように審判が存在しないため、不適切なプレイをしても怒られない。まさに子とも同士で遊んでいる状態で、やりたい放題なのである。
相手を傷つけたことが実感できない問題
ほとんどの人は子供のころ、友達と集まってゲームでわいわい遊んだことがあるだろう。
さらに多くの人は、ゲーム中に相手を挑発してしまい、友達と喧嘩になったりした経験があると思う。
その結果、一緒にゲームができなくなったり、仲が悪くなってその後しばらく遊んでくれなくなったりする。
これは、自分の言動で相手を傷つけてしまい、相手から嫌われてしまった状態である。
しかし、次の日もその友達とは学校で会うわけだから、悪いことをした方が相手にごめんねと謝り仲直りしたりする。
子供のころはこのような失敗を経験しながら、相手に対してやっていいことと悪いことを学習していく。
しかし、オンラインゲームではそれが特に無いのだ。
例え特定のユーザーに挑発行為を行い、喧嘩したりブロックされたりしたとしても、他に何万人というユーザーがプレイしているため、すぐに他のユーザーと何食わぬ顔でプレイできる。
オンラインゲームでは、たとえ特定の相手を傷つけたとしても、なんの実感もないのである。
傷つけられた方はダメージを負うが、相手を傷つけた側は知らぬ存ぜぬでプレイを続けることができる。これでは、子供はやっていいことと悪いことを学習することができない。
ここで仮に、暴言を少しでも書いたらアカウントがBANされるなどというペナルティがあれば問題が解決するのかというと、それは違うだろう。なぜなら、アカウントはいくらでも新しく作れるし、そもそも、自分の言動で相手が傷ついたことがわからないからだ。
相手が傷ついているのを感じることで、人間は自分のやったことが悪いことだったと理解し、反省する。
暴言を吐きました。そしたらアカウントBANされました。
では何の解決にもならない。
さいごに
以上が、僕が個人的に思ったeスポーツの世界から暴言がなくならない理由である。
これから新しくeスポーツの世界に飛び込もうと思っている人、現在オンラインゲームにはまっているお子さんの親御さんは、オンラインゲームにはこのような世界があることを知っておくと良いと思う。
少なくとも、僕はもうこのようなオンラインゲームはやらないと思う。それは、ゲーム自体の楽しさより、不適切なプレイに対する不快感の方が勝るからだ。
もしゲームをやるとすれば、オフラインのものを友達と集まって楽しむ場合だけだろう。