悲しき無能な働き者
勝手な判断で動き回り、余計な仕事を増やし、組織に損害を与える。
このような人は、俗に「無能な働き者」と呼ばれ恐れられている。
無能な働き者の特徴はこちらの記事にもいろいろと書いているが、例えば以下のようなものである。
- 無駄な打ち合わせが多い
- 打ち合わせが仕事だと思っている
- 何もしないことができない
- 重要ではない仕事を好む
- やる必要のない雑務を増やす
- 人の時間を奪う
- 結果を見ようとせず、「頑張ってる自分」こそが評価されるべきだと信じている
- 自分の中のルールに厳格
- 自分の間違いを絶対に認めない
細かく挙げるとまだまだあると思うが、ざっとこんなとこだろう。
これらの根本にある原因は、無能な働き者が「正しい判断ができないにもかかわらず自分で勝手に物事を判断し、その間違った判断のまま突っ走る」ことにある。
このため、周りがそれとなく指摘しても、自分が間違っているなんて夢にも思ってない彼らは、
「自分は一生懸命仕事をしてるんだ!そんな自分が間違ってるわけない!」
と精神論の極みみたいなことを叫び聞く耳を持たない。
残酷な話であるが、
彼らが一生懸命働けば働くほど、邪魔なのである。
ここまでくるともはや悲しくなってくる。
CIAのスパイ
次に、CIAのスパイが敵の組織の生産性を下げる(組織を壊滅させる)ために行っていた工作活動をみてみよう。
この具体的な活動は「Simple Sabotage Field Manual」(通称「サボタージュ・マニュアル」)というファイルに書かれている。
正確に言うと、これはCIA(中央情報局)の前身であるOSS(米国戦略諜報局)が作ったものらしい。
因みに、「Simple Sabotage Field Manual」の原文はここから確認できる。
ざっくり言うと、このファイルには敵の組織の生産性を低下させるためにスパイがどのように振舞うべきかという指針が書かれている。
かなり昔の資料であるが、中身は現代にも通じる衝撃的なものになっている。
それぞれの場面ごとに面白いと思った工作活動の内容をまとめたので早速見てみよう。
マネージャとしての妨害工作
In making work assignments, always sign out the unimportant jobs first. See that important jobs are assigned to inefficient workers.
仕事を与えるときは、常に重要でない仕事から先に割り当てましょう。重要な仕事は効率の悪い社員に割り当てるようにしましょう。
Insist on perfect work in relatively unimportant products; send back for refinishing those which have the least flaw.重要ではない仕事に完璧さを求めましょう。少しでもミスがあれば修正するように突き返しましょう。
To lower morale and with it, production, be pleasant to inefficient workers; give them undeserved promotions.社員の士気を下げて生産性を低下させるために、出来の悪い社員を喜ばせて昇進させましょう。
When training new workers, give incomplete or misleading instructions.新入社員を教育するときは、不完全な指示や誤解を招く指示を与えましょう。
Hold conferences when there is more critical work to be done.より重要な仕事があるときこそ、会議を開きましょう。
部下としての妨害工作
Work slowly.
のろまに働きましょう。
Contrive as many interruptions to your work as you can.できるだけ多くの仕事の邪魔をしましょう。
Do your work poorly and blame it on bad tools, machinery, or equipment. Complain that these things are preventing you from doing your job right.自分の仕事を粗末にし、それを道具や機械など環境のせいにしましょう。そして、環境が悪いから仕事ができないと不満を言いましょう。
Never pass on your skill and experience to a new or less skillful worker.自分の技術や経験を、後輩に教えないようにしましょう。
会議に関する妨害工作
Make “speeches.” Talk as frequently as possible and at great length. Illustrate your “points” by long anecdotes and accounts of personal experiences.
できるだけ頻繁にだらだらと長い「スピーチ」をしましょう。要点を説明する際には、逸話や個人的な体験談を交えながら長々と話しましょう。
When possible, refer all matters to committees, for “further study and consideration.” Attempt to make the committee as large as possible — never less than five.可能な限りすべての問題を委員会にかけ、「さらなる調査と検討」を求めましょう。委員会の人数はできるだけ多くしましょう。決して5人以下にはしないように。
Bring up irrelevant issues as frequently as possible.関係ない問題をできるだけ頻繁に持ち出しましょう。
Haggle over precise wordings of communications, minutes, resolutions.連絡事項、議事録、決議事項の正確な言葉遣いにこだわりましょう。
Refer back to matters decided upon at the last meeting and attempt to re-open the question of the advisability of that decision.前回の会議で決まった事項を蒸し返し、その決定の妥当性について再検討しましょう。
手続きに関する妨害工作
Insist on doing everything through “channels.” Never permit short-cuts to be taken in order to expedite decisions.
何をするにも「指揮系統」を重視するよう主張しましょう。迅速に意思決定するためのいかなる近道も許してはいけません。
Demand written orders.書面での指示を要求しましょう。
Multiply paper work in plausible ways. Start duplicate files.もっともらしい方法でペーパーワークを増やしましょう。ファイルを写すところから始めましょう。
Multiply the procedures and clearances involved in issuing instructions, pay checks, and so on. See that three people have to approve everything where one would do.指示出しや小切手の支払いなどに関連する手続きを増やしましょう。1人の承認でいいものでも、3人の承認を必要としましょう。
https://www.hsdl.org/?abstract&did=750070
「Simple Sabotage Field Manual」の原文はもちろん英語なので、私は翻訳ソフトでさらっと翻訳してさらに意訳しただけである。
なお、この資料の真偽の程までは確認していないので興味のある方は自分で確認してほしい。個人的にはこれが作り話であったとしてもこのブログで伝えたい事は変わらないので問題ないと思っている。
無能な働き者とスパイ
どうだろう、今の会社で行われている無駄な業務が、スパイが組織の生産性を下げるために
意図的にやっていることだと考えたら辻褄が合ってしまう。そんな恐ろしさを感じないだろうか。
もちろん、今あなたが働いている会社に実際にスパイが潜入しているわけはないだろう(それはさすがに陰謀論が過ぎる)から、この「スパイ的な」活動をしている人は単に無能な働き者なのだと考えられる。
しかしまあ、このスパイと無能な働き者のやっている事は恐ろしく似ている。
どちらも、まさに敵の挙動である。
もしかすると、昔スパイに実際にやられていた妨害工作を仕事だと間に受けた無能な働き者がいて、それが現代まで引き継がれているのではないかと疑ってしまいそうになる。この可能性もなくはないが、またちょっと陰謀論的になってしまうので、これ以上言うのは止めておこう。