9割の会議は無駄
これは、僕が実際に感じている無駄な会議の割合である。
僕の勤める会社は最先端のIT技術を扱う関係もあり、そこまで古い考えを持った人が多いわけではない。
むしろ、新しい考え方はどんどん取り入れる風土である。
しかし、そのような会社であっても、9割の会議は無駄と感じるのが実情だ。
少し正確に言うと、
・やる必要が全くない会議が6割
・やる必要がほとんどない会議が3割
・やる必要が少しはある会議が1割
といった感じだろうか。
この状況で、自分がマネージャの立場なら会議をやるかやらないか自体を決めることができるが、若手の内はそうはいかない。無駄と思いながら会議に出て、時間と労力を浪費してしまっている人がほとんどではないだろうか。
僕も今となっては小さなチームを持っており、チーム内の事は責任をもって方針を決めている。そして極端かもしれないが、僕のチームでは報告だけの定例会議などは全て無くし、その他の会議もほとんどやっていない。
それでも、何の問題もなく(むしろ効率良く)チーム運営ができている。
結局のところ、情報の共有だけであればメールで済むし、議論もチャットでできる。本当に対面で会議する必要があることの方が稀なのだ。
むしろ、メンバーの思考回路や感性、人となりを理解するために、ただ雑談するだけの時間を作ろうかと考えているくらいだ。
良い会議とは何か
無駄な会議を語るには、まず良い会議とは何であるかを自分の中に持っておかなければならない。
これは数学の問題ではないので唯一の正解があるわけではないが、僕の中ではシンプルな答えが出ている。つまり良い会議とは、
参加者が同じ目的を持っている会議
である。(と考えている)
もちろん、アジェンダの決め方がどうとか、参加者の人数がどうとか細かい話はあるだろうが、最も重要な要素は「目的が同じであること」だと思っている。
目的が同じとは、至極簡単な例で言うと、
A「今度の連休、3人でどこか旅行でも行かない?」
B「いいねー!久しぶりにドライブとか、温泉とか、行きたいとこいっぱいある!」
C「じゃあ、どこに行くか決めようよ!」
A B C「ワイワイガヤガヤ」
これがそうである。
「旅行の行き先を決める」という目的がしっかりと共有されているため、全員が同じ方向に向かって会議を進めることができる。その結果、出てくる意見もその目的を意識した建設的なものとなる。
細かいことを言えば、事前準備として、行きたいところをリストアップしておくことや、会議の進め方を考えておくなど、この会議をもっと良くするための改善点はいくらでもあるだろう。
しかしそのあたりの細かいことは気にしなくて良いだろう。なぜなら、最も重要な「参加者が同じ目的を持っている」という条件が満たされているからだ。ここさえ間違えなければ、後から軌道修正したり効率化したりはいくらでもできる。
逆に言うと、参加者の目的がバラバラな会議で、事前準備をいくらしっかりしても、残念ながらそれは無意味である。
無駄な会議は参加者の目的がバラバラ
では、無駄な会議とは何か。
それは良い会議の逆。
つまりは、参加者の目的がバラバラな会議である。
参加者の目的がバラバラの場合、会議はどうやっても収束しない。
結論という1つのボールを、みんなそれぞれ違う方向に運ぼうとしているのだから、収束するわけがない。
これは当たり前の話である。
しかし、現実にはこの恐ろしい会議が行われてしまう。
それも9割の確率で。
なぜ目的がバラバラなのか
では、なぜ目的がバラバラになるのか。
それは、会議の参加者の立場が違うことが大きな理由である。
いったいどういうことなのか。
例えば、お菓子メーカーで新商品を開発する会議を考えよう。参加者は以下のメンバーとする。
・製造ラインの担当者
・マーケティング担当者
・営業担当者
・責任者である担当役員
この会議の目的はもちろん、「良い新製品を開発する」ことである。
この目的をみんなで共有することは一見簡単なことのように思えるが、実はとても難しい。
それぞれが表向きは「良い新商品を開発する」という目的で集まっているとしても、それぞれの立場によって、実は真の目的が違っているのだ。
つまり、それぞれの参加者の心の内を覗くと、
・製造ラインの担当者は、既存の製造ラインをなるべく変えずに済む商品にしたい。
・マーケティング担当者は、とにかく自分の調査結果を反映した商品にしたい。
・営業担当者は、とにかくアピールがしやすい商品にしたい。
・責任者である担当役員は、とにかく失敗したくないため無難な商品にしたい。
の様なものだったのである。
これでは4人の会議は収束せず、無駄なものとなってしまう。
それぞれの真の目的がバラバラであるため、話が一つの方向に進まないためだ。当然会議の結論も出ない。出たとしても「良い新商品」とは程遠いグダグダなものになるだろう。
しかし、実はこれでもマシな方である。なぜなら各参加者が自分の担当している仕事をベースに考えているからだ。
現実はもっと酷い。もっと人間的な要素が絡んでくる。
例えばこんな感じだ。
・製造ラインの担当者は、マーケティング担当者のことが大嫌いで、とにかくそいつの意見を通したくない。
・マーケティング担当者は、製造ライン担当者が嫌いで、言うことを絶対に聞きたくない。
・営業担当者は、担当役員に媚を売ってとにかく出世したい。
・責任者である担当役員は、とにかく責任を負いたくない。会議で評論家みたいなことを好き勝手言っておき、後で問題があれば担当者のせいにすればいい。と思っている。
この4人の会議はこの世の地獄となる。会議が無駄かどうか以前の問題だ。
そう、表向きは「良い新商品を開発する」とみんな言っているが、心の中では全く違う(むしろ真逆の)ことを考えているのである。
参加者の立場がバラバラであるがゆえに、それぞれの利害関係が存在する。その状態で目的を同じにすることは極めて難しい。これはもはや、会議のアジェンダがどうとか事前準備した資料がどうとか、小手先のテクニックではどうにもならない。
だからこそ、参加者が同じ目的を持つことが最も重要なのである。
真の目的は確認できない
では、会議が始まる前に目的をしっかりと参加者に伝えておき、何度も念を押せばいいじゃないかと思うかもしれない。
しかしはっきり言おう。
それは机上の空論である。
なぜなら、人間はそれぞれ別の思想や感性を持っており、自分の常識を他人に対して完全に押し通すことはできないからだ。
自分は「良い新製品を作る」という目的のためなら全てを懸けられるのかもしれないが、他の人はそうじゃない。いくらその目的を念押しされたとしても、そのために嫌いなやつの意見を進んで聞こう、出世を捨てて役員に意見しよう、とは多くの人は思えないのだ。
それに、自分がどれだけ頑張って参加者の目的を表面上では揃えたとしても、それは真に確認することができない。なぜなら、
人の心の中はわからない。
からである。
実際は会議が始まって、しばらくだらだらと無意味な時間を過ごす中で、「あれ、これおかしいぞ?この会議、全然収束しない、、目的が違うやつが混ざってるんじゃないか?」と気付くことしかできないのである。
無駄な会議をなくすためには
ここまで、無駄な会議が行われてしまう理由を書いてきた。
では、結局どうすればよいのか。
無駄な会議を、良い会議に変える方法はないのか。
僕の結論はこうだ。
既にある無駄な会議を良い会議に変える(もしくはなくす)ことはかなり難しい。なぜなら、その無駄な会議を主催している人は、今までずっと無駄な会議をして違和感すら感じていない人である。そういう人はもう変わらないと考える方が自然だ。
なので、「無駄な会議をなくしたい」という思いを持った自分がマネージャになり、責任をもって良い会議に変える(もしくはなくす)のが実は最も簡単。
ということである。
今出席しなければならない無駄な会議のことは、将来、自分がチームのメンバーに「昔はこんな無駄なことをやっていたんだよ」と笑い話にする際のネタになる、という程度に考えることにすると良いだろう。