はじめに
ここでは、僕が実際にTOEIC200点台で国立大学に入学した方法+αを紹介する。
改めて言っておくが、TOEIC200点台とは中1の英語を全く理解していないレベルである。これがどういう世界なのかはこの記事を参考にしてほしい。
しかし、絶望的に思えるようなこのレベルの人でも、実は国立大学に正規ルートで入学することが可能である。
特に、ちょっとでも良い大学に入りたいと思っている高校生や中学生、その親御さんはこのルートを知っておくと良いと思う。
今の世の中、情弱は損をする。情報を多く持っているに越したことはない。
センター試験は受けたことない
国立大学に入学するためには、当然何らかの入試を受けて合格する必要がある。
そんなの知ってるよ、当たり前じゃんと思うかもしれない。そうなのだが、皆さんが思っている入試はこの2つではないだろうか。
- 第1次試験(いわゆるセンター試験)
- 第2次試験(各国立大学で実施する個別試験)
この2つの試験は一般的にも超有名である。この試験に合格すれば憧れの大学に入学することができる。一方で、不合格であれば滑り止めの大学に仕方なく入学するか、浪人して来年また挑戦するかを選択することになる。
しかし、僕はこの2つとも受けていない。もっと言うと、センター試験がどんなものなのか、何の科目があるのかすら知らない。
そう、国立大学への入学ルートはまだほかにある。
編入学というルート
知っている人からすると超今更な話ではあるが、特定の国立大学の特定の学部には、学部3年生に途中参加できるルートが設けられている。これを編入学という。
※私立大学でも編入学はあるのだが、僕は受けたことがない。
この編入学のための試験を編入試験というが、これに合格すれば晴れて国立大学に入学できるのである。
では、この編入試験はどういった人を対象としている試験なのか。
学部3年生に編入するわけだから、受験時点で学部2年生の歳。つまり19歳もしくは20歳くらいの人を対象としていることになる。この年齢で考えられるのは、
・ほかの大学の学部2年生
・短大の2年生
・高等専門学校(いわゆる高専)の5年生
である。
僕は実際にこの編入試験を受けたのであるが、受験生の大半は高専生であった。(一部ほかの大学の4年生もいた、短大生は見ていない)
おそらく、編入試験の募集要項に明記はされていないが、メインターゲットは高専生だと思う。
高専の偏差値は地域や学科によってかなりばらつきがあるが、総合的にみると優秀な学生が揃っているといえる。さらに、高専1年生(15~16歳)の時から専門的な授業を受けているため、大学の講義にも十分ついていける。(というか追い越してすらいる)
そのため、各大学としては既に専門性を持っている優秀な高専生を入学させたいのだと思う。
※個人の推測
通常ルートで大学に入る高校生と、編入ルートで入る高専生の大学までの流れは以下のようになる。
年齢 | 通常の入学ルート | 編入学ルート |
16 | 高校 1年生 | 高専 1年生 |
17 | 高校 2年生 | 高専 2年生 |
18 | 高校 3年生(通常の入試を受験) | 高専 3年生 |
19 | 大学 1年生 | 高専 4年生 |
20 | 大学 2年生 | 高専 5年生(編入試験を受験) |
21 | 大学 3年生 | 大学 3年生 |
22 | 大学 4年生 | 大学 4年生 |
普通の中学生や高校生が、この編入学という仕組みを知ることはほとんどないと思う。実際に僕も高専に入って何年か後に知った。
このルートに乗るためには、
・今中学生の人は、高専に入れば良い。
・今高校生の人は、高専に編入(こちらにも編入ルートがある)し、高専4年生となれば良い。
・既に大学に通っている人は、そのまま編入試験を受ければ良い。
そう、誰でもこのルートに乗ることができるのである。
編入学のデメリット
編入学にもデメリットはあるので伝えておく。しかし、個人的にはメリットのほうが総合的にかなり大きいと思っている。
大学によって編入試験の内容が全然違う
編入試験は大学の学部のさらに学科ごとに実施されている。そのため、すべて微妙に仕組みが異なっている。例えば試験科目は学科によって全然違う。
同じ物理学科であっても、A大学の物理学科とB大学の物理学科では、試験科目やそれぞれの出題範囲も違っている。
そのため、それぞれの大学用に勉強を行う必要がある。
さらに、大学によっては編入試験をそもそも実施していない場合もある。
自分の行きたい大学がどのような編入試験を実施しているのかは事前に必ず調べておこう。
3年生になれるとは限らない
何を言っているのかわからないと思うが、編入試験に受かっても3年生として編入できない大学もある。おそらく受験生が取得していると大学側が想定する単位の関係なのだろうが、大学によっては2年生として編入することになる場合がある。
受験生の立場としては、高専などで普通に頑張ってきて留年も浪人もしていないのに、なぜ1学年下になるのか意味がわからないだろう。
これらの情報も必ず調べておこう。
大学1、2年生という人生で最高の時期を経験できない
これが編入学のデメリットなのかといわれると怪しいが、個人的には最も痛いデメリットだと思う。
「いや、3、4年生の2年間があるからいいじゃん」と思うかもしれないが、学部によっては(特に理系)4年生で研究室に配属されるため、4年生以降は夏休みなどの長期休みが取れなくなるのである。
大学生の夏休みは最高である。
2か月近く休めるし、若いし元気もある。友達と色々なことに挑戦できる。初めての彼氏彼女もできるだろう。そんな大切な時期に大切な仲間と過ごす夏休み2回分をまるまる経験できないのである。
想像してみてほしい、
入学式で仲良くなった友達、部活やサークルで出会った可愛い子やかっこいい先輩。他愛もない会話やLINEのやり取り。サークル合宿で好きな人と2人で夜の散歩。男女4:4での宅飲み。・・・
これが全部経験できない。これほどのデメリットがあるだろうか。
何を言っているのかわからない人は「オレンジデイズ」(妻夫木聡と柴咲コウが主演)というドラマを見ると良い。大学生の青春が全部詰まっているから。ちなみにこのドラマを見ると、大学に行きたいという思いが強くなり、成績が上がる。
僕自身、大学に3年次編入した時には「オレンジデイズ」をしっかりと鑑賞し大学生活を予習、大学生を思いっきり楽しもうと色々な人と色々な場所に出かけ、結構充実した日々を送った。しかし3年生が楽しかった分、余計に大学1、2年生を経験できなかったことを悔やんだりもした。
編入学のメリット
実際に編入学を経験し、個人的にこれは大きいと感じたメリットを伝える。
TOEIC200点台でも合格する
これである。これほど大きなメリットはない。中学1年生レベルの英語も理解しておらず、今までの人生で英語から逃げてきた人でも合格するのである。
しかし、どんな大学でも合格するわけではない。TOEIC200点台で編入試験に合格するためにはちょっとしたコツが必要である。
複数の国立大学を受験できる
これもかなり大きい。知らない人も多いと思うが、編入試験の日程は大学によって異なる。そのため、日程が被っていなければ何校だって受験できるのである。
基本的に1校しか受けれない通常の受験と比べるとこれほど気持ちが楽なことはないだろう。東大、京大、阪大をはじめ、受けたい放題なのである。
ただし、受験料(僕の時はどこも3万円だった)は毎回必要である。が、今後の人生を考えれば安いもんである。
受けて受けて受けまくればよいと思う。
得意な試験科目を狙うことができる
僕がTOEIC200点台にもかかわらず合格できたのは、これのおかげである。
大学によって試験科目が異なっているため、自分の得意な科目が試験科目になっている大学を狙って受験できるのである。逆に言うと、自分の苦手な科目が試験科目になっていない大学を狙うこともできるということである。
僕はこれを利用し、試験科目に英語がない大学を募集要項を読みまくって探し、狙い通り合格することができた。
編入試験に受かる方法
編入試験の構成
試験科目は大学によって違うのだが、編入試験自体は次の2つの内容で構成されていることが多い。
・筆記試験
・面接試験
大学によっては筆記試験と面接試験を2日に分けて行う場合もあるし、1日でまとめて実施する場合もある。
筆記試験については言うまでもない。募集要項を見て試験科目とその範囲を確認し、あとはしっかりと勉強するだけである。ここは工夫のしようがない。
工夫できるのは面接試験の方である。
面接試験は実力以上の評価をしてもらうチャンス
面接試験は、受験した学科の先生たち(教授、准教授ら)数人(3人くらい)と行うことが多い。
そして、この面接自体も大学によってかなり違う。面接というと面接官の質問に答えるものというイメージがあると思うが、編入試験の面接はそのような質疑応答のみではなく、その場で計算問題を出してホワイトボードに回答を書かせたり、英語の文章を読ませるところもある。(口頭試問とも呼ばれる)
問題を解かされる場合はかなり緊張すると思うが、焦って解こうとしてはいけない。一度深呼吸でもして落ち着くのが大事である。面接官の立場になって考えると、焦って解いて「はいできました!」と汚い字の回答をされるより、ゆっくりと落ち着いて途中計算も丁寧に回答してもらえる方が好印象のはずである。
面接は印象も大事である。
そして、質疑応答では多くの大学で共通している質問がある。
それは、「なぜ○○学科を受験したのですか?」「○○学科で何をしたいのですか?」の様な、受験理由を問う内容のものである。
ここでは、
背筋を伸ばし、相手の目を見て、真剣に、丁寧に、熱く、自分の考えを伝えよう。
話の内容ももちろん大事なのだが、姿勢や声のトーンなど、相手の印象を良いものにすることも重要である。
編入試験の面接官はその学科の先生である。
つまり、先生側から見ると、今目の前にいる受験生は、わずか1年半後に自分の研究室に配属されてくるかもしれないのである。
大学の先生も人間である。自分の研究室に入ってくる学生とは、1年もしくは大学院に行くのであれば3年以上を共に過ごすことになる。そうなれば、優秀なのはもちろんであるが、それと同じくらい人間的に良い学生に入ってきてほしいと思うはずである。
そのため、面接で良い印象の学生の方が試験の成績が良いだけの学生よりも総合評価が高くなる可能性も十分に考えられる。
面接試験の裏技
当時の僕は無知ゆえに考えが及ばず実行できなかったが、今だから思う裏技がある。
仮にこれをやっていたらどんな大学にも受かっていたかもしれない。(もちろん筆記試験はしっかり勉強していないといけないが)
先ほど、3人くらいいる面接官はその学科の先生といったが、誰がいるのかは面接室の扉を開けるまでわからない。
しかし、実は1人だけ事前にわかるのである。
しかも、面接官の中で最も権限を持つ先生が。
いったい誰なのか。
それは、その年にその学科の学科長になっている先生である。
※ 学科長の先生は固定ではなくだいたいどこの大学も毎年変わる。
これは僕が実際に大学に入ってから気付いたことなのだが、学科長の先生というのは入試に関してかなりの権限を持っている。そのため、多くの場合に面接試験の試験官になっているのである。(絶対ではないが可能性はかなり高い)
このため、自分が受験する学科の学科長がどの先生かを調べることで、当日の面接官の内の1人(最も重要な1人)が誰なのかを事前に知ることができるのである。
「だから何?」
「先生の名前が分かったところで、どんな人かも知らないしどうしようもなくない?」
と思うだろうか。実はここからが重要である。
学科長の先生は大抵は教授である。教授ともなると、その先生の名前をググれば、論文はもちろんのこと、著書であったり一般向けの講演スライド、YouTubeの動画などが出てくる。
それらをチェックすることで、その先生の、
・現在の研究内容、これからやりたい研究
・仲のいい共同研究者
・研究に対する考え方
・座右の銘、尊敬している偉人などの思想的な情報
を知ることができる。
そしてその内容を、面接のときにあたかも自分のやりたい研究や考え方であるかのように話す。先生からすると、自分と同じ考え方を持っている学生が目の前に現れるわけで、当然印象はよくなる。
もちろん一字一句同じだとバレるので、ニュアンスは残したまま自分の言葉に変換して伝える必要がある。いかにも調べてきました、という雰囲気を出してしまうと、お世辞を言っているみたいで逆効果だが、うまく決まればこれほど強い武器はない。
複数の大学を受けることができる編入試験。
1校くらいで試す価値はあると思う。
誰に何と言われようが、受験は受かったもん勝ちである。
油断は禁物
ここまでで、国立大学の編入試験は超簡単な印象を持ったかもしれないが、やはり試験は試験、勉強をある程度しっかりしておかないと合格はできない。それでも、通常の入試と比べると格段に難易度は低いと思うが。
僕自身、7月の編入試験に向けて勉強を開始したのは3月後半であった。つまり、試験勉強は3、4か月程度しかやらなかったのである。しかしそれでも合格した。やはり得意科目だけで受験できるのは強い。
結局のところ、編入学は超簡単ではないにしろ通常の入試に比べるとかなり難易度の低い穴場的なルートだと思う。TOEIC200点台でも、高校時代に死ぬほど勉強した人たちと全く同じ大学生になれるのである。
こう言うと、「なんか、大学に入ってから苦労しそう」、「楽して大学に入りやがって」などと否定的な意見もあると思うが、僕自身の経験から言うと、勉強や研究は全く苦労しなかった。それよりかむしろ、教授からは通常ルートの学生よりも高い評価を受けていた。
結局のところ、TOEIC200点台でも、ほかの専門科目(僕の場合は数学・物理)に強ければ全く問題無いのである。(このあたりの話は別の記事で紹介する)
なんにせよ、大学は入ったもん勝ちである。
この話が皆さんの進路の参考になることを願う。